京都の風呂敷・和雑貨のメーカーとしてふろしきを中心とした和文化を創造する山田繊維株式会社のホームページです。
風呂敷は正方形ではない。上下と左右の長さがほんの少し違う。風呂敷は、反物を裁断しその端を三ツ巻きにして縫い上げる。縫った端を天地(上下)とし、生(き) 地(じ) 巾(はば) が左右となる。巾(はば) よりも天地方向のほうが若干長くつくられている。
風呂敷には天地左右があり、真四角ではない。上下(天地)の長さを丈(たけ)、左右の長さを巾(はば)という。
包むもの(中身)の大きさの目安は、風呂敷の対角線の約3分の1。このくらいが一番包みやすい大きさとされている。主柄(おもがら)は自分から見て奥になるように裏返して広げる。
サイズは、「巾」という単位で、二(ふた) 巾、二(に) 四(し) 巾、三(み) 巾…と表し、基本だけで約10種類のサイズがある。この表現は、生地巾が一巾(約36cm)で作られていた時代に、一巾のものを縫い合わせて巾の広いもの(例えば、一巾+一巾=二巾)を作ったことに由来する。現在では、広(ひろ) 巾の生地が生産できるようになり、四(よ)巾約128cm)までは一枚もの、五(いつ) 巾(約175cm)以上は縫い合わせて作られている。最近では効率的に広幅から小さいサイズを量産するため、四方縫いで正方形のものもバリエーションに加えたり、基本のサイズ以外も商品化される傾向である。
四角形の布を包み布として使う文化を持つ国は日本以外にも多い。韓国のポジャギや、中国のバオフ、またチベットや、南米のチリでも同じような包み布の文化は存在する。それらはその国の気候や風土に、また民族の美意識によって素材、色、柄にそれぞれ違いが見られる。四季折々の豊かな自然に恵まれ独自の感性を育んできた日本。日常の道具にも、日本人独特の美意識や繊細な心配りが感じられるのは興味深い。
一枚の布には日本人の美意識が詰まっている。広げたときの美しさはもちろん、包んだときの変化も考えて構成されている。非対称の美しさや、平面と立体とを同時にとらえる視点も日本人特有の感性といえるだろう。
色は、日本の伝統色が基本。万人に永く愛用される色が使われてきた。色がもつそれぞれイメージがあるため、目的に合わせてふさわしい色柄を選ぶ必要がある。
風呂敷の素材も時代とともに豊富になってきている。色同様目的に合わせて、ふさわしい素材を選ぶことが望ましい。それぞれに手入れの方法も変わる。
風呂敷の絵柄には、おめでたい意味合いの吉祥文様が好んで描かれる。花鳥風月を表した柄や、単純化し連続させた小紋柄などにも意味や願いが込められている。文様一つにも思想や遊び心が見え隠れする。
マナーとは、決して堅苦しいものではない。大切なのは、自分本位ではなく相手の心をいかに汲むかである。特に慶弔時にはこころしたいもの。弔事には派手な色をさけるなど、ちょっとした心くばりと知識を身につけておけば、あわてることなく目的に応じて適切に使い分けることができるようになる。相手に差し出すときはぜひ、温かい心遣いを包み届けたいものである。
祝儀、不祝儀の金封を包むには、袱紗(ふくさ) もしくは小風呂敷を使う。袱紗の特長は2枚袷(あわせ) になっていること。風呂敷を使う場合は中巾(約45cm)を使用する。お祝い事には明るめの色を、お悔やみの場合は地味な深めの色を使うのがふさわしい。
風呂敷の成り立ちをひもとくと、二つの道筋が浮かび上がる。一つは「包み布」としての流れ。布でものを包む習慣は古くからあり、奈良時代には、「裏」「幞」と書いて“つつみ”と呼び、貴重な品を保管するために包む布として使われていた記録が残っている。奈良の正倉院には御物を包んだ布が1200年の時を経て現存する。平安時代には「衣幞」と書いて“古路毛都都美(ころもづつみ)”と呼び、鎌倉時代には「平包」と呼ぶ布が存在していたことが文献にある。これらは現在の包み布としての「風呂敷」の前身であり、時代とともに名称を変えて使われ続けてきた。
一方、「風呂敷」の語は風呂が一般化するとともに世間に浸透していった。徳川家康の遺品目録「駿府御分物御道具帳」には「風呂敷」の語が見られ、風呂で使う布としてその用途が語源となっていることがわかる。
そもそも“風呂”とは現在の湯船に浸かる形式とは違い、蒸気による発汗を目的とした蒸風呂をさす。入浴の際、他人のものと取り違えないように布で衣類を包んだり、入浴後はその布を床に敷いて足をぬぐったり、その上で身繕いしたと考えられる。このような背景から「風呂敷」という名前の由来が見えてくる。
形状や用途の似た「平包」と「風呂敷」は人々の暮らしの中で徐々に区別のつきにくいものとなり、江戸時代中頃にはものを包む布を「風呂敷」と呼ぶことが一般化し、定着したようだ。商人は品物を運搬するために、また、旅人は荷造りの道具として、風呂敷はさまざまな場面で使われた。そんな歴史をたどる風呂敷だが、近年私たちの暮らしの中からはすっかり影をひそめていた。戦後の高度経済成長期を経て、古臭い、面倒くさいといったマイナスイメージにより、風呂敷は使われなくなった。百貨店やスーパーマーケットの、紙袋やレジ袋のサービスの定着も大きく影響し、また急激な世相の変化に風呂敷自体がついていけなかったのも要因と考えられる。
しかし今、再び風呂敷が見直されつつある。一つは環境問題対策の視点から、もう一つは若い世代が日本文化は面白いと関心を持ち始めたことによる。
風呂敷には欠かせない「包む」と「結ぶ」。そこには深い意味が隠されている。「包」の文字は、母体に宿った新しい命を大切に慈しむ姿をかたどったもの。「結び(=ムスヒ)」の原義は、形のないものを形づくること、無から有を生み出すことを意味するという。ご飯を握って形づくる“おむすび”も、果実が“実を結ぶ”のも、その象徴といえる。風呂敷は「結ぶ」ことで一枚の布に機能性を促し、形づくって目的を果たす。また、「包む」ことで中身を大切に扱い、届ける相手にも敬意を払う。風呂敷は日本人の精神性にも通じている。
一枚の布「風呂敷」は、千年を越えて使われてきた。名称は変わりながらも、形はさほど変わることなく受け継がれてきた。その背景には、先人たちの知恵があり心があった。限られた国土、資源、狭い家屋でも心豊かな暮らしを営むことができたのは、それらへの感謝を忘れず、必要な時に必要な分量を最後まで有効に利用する知恵や工夫を誰もが身につけていたからではないだろうか。そんな先人たちの営みを風呂敷は教えてくれる。
ライフスタイルやファッションが大きく洋風化した現代。風呂敷も色柄がカラフルでモダンなものや、素材も透けるような薄手のものなど今までの風呂敷のイメージを払拭するものが開発されている。使い方、持ち方においても今のファッションに合うスタイルが求められている。着物姿で風呂敷を使うイメージから、洋服で持つスタイルへ。改まった晴れの日の道具としてだけではなく、日常に役立つ便利な道具へと時代の価値観が動きつつある。
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